▪️「黒いデカ長(仮)」というタイトルの出所について
中学生のころ、ラジオの洋楽ランキング番組を熱心に聞いていた時期がありました。ある時、映画『黒いジャガー(原題:Shaft)』のテーマ曲が長い期間1位をキープしていたのを覚えています。
ラジオではフルコーラスが流れなかったため、続きを聞きたくてドーナッツ盤を購入しました。A面が「黒いジャガーのテーマ」、B面が「夕陽のギャングたち」という2曲構成。
作曲者は前者はアイザック・ヘイズ、後者はエンニオ・モリコーネ。
どちらも映画サントラですが、作曲家も違うしジャンルも違うものだったので、当初はA面ばかりを聞いていたのですが、あるときB面の魅力に気づき、特別なレコードの1枚になりました。
ジャンルも音楽性も異なるこの2曲が、なぜカップリングされていたのか不思議に思っていましたが、思うにどちらの曲にも女性コーラスが印象的に使われていることです。
「黒いジャガー」では「Shaft」、「夕陽のギャングたち」では「Sean」
これが、頭の中のどこかにしまわれていて、時折ふと蘇ってくるようです。
ちなみに、『黒いジャガー』という映画が、アメリカの社会問題に深く関わる重要な作品だと知ったのは、ずっと後になってからのことでした。
▪️仮タイトル「ヌーベルバーグのような」の制作についての話
この曲は、谷口くん発信の楽曲です。最初に聴いた瞬間からトリュフォー映画のようなイメージが膨らみ、その後の制作もスムーズに進みました。
サビをもう少しグルーブさせて欲しいというリクエストがあり、今週はベースラインとストリングスアレンジの修正作業にがっつり取り組みました。
ここから少しマニアックな話になりますが、私の音楽制作のメインツールは、Apple社のLogic Proというソフトです。進化を続けるこのソフトを使いこなすのは大変ですが、最近は「FLEX」という機能を多用しています。
このFLEXは、オーディオデータを解析して、音符を自由に編集できる便利な機能です。
谷口くんから送られてきたドラムデータにベースのグルーヴを合わせようとした際、どうしても噛み合わない感覚がありました。そこで、ドラムをFLEXで解析し、MIDIとして視覚的にタイミングを確認すると、キックとスネアはジャストに入っているけど、その手前のシンコペーションが少し後ろにズラしていることが分かりました。「なるほど」と納得し、そこに合わせてベースにアクセントを加えることで、グルーヴが生まれました。
以前は耳コピでこうした作業をしていたので、大変でしたが、今では視覚的に確認できるので楽になっています。
このFLEX機能は、自分の歌や演奏のクセの分析にも役立ちます。録音したデータをFLEXで解析すると、自分でも気づかなかった手ぐせやピッチのズレがすぐにわかります。
見てしまうと修正したくなるのですが、逆に個性(味)が薄まることになるので注意が必要になります。
今週はここまで。
次回に続く